「効き脳」とは、欧米の企業を中心に200万人以上が活用するハーマンモデル理論に基づいた思考特性です。脳の“効き”を知ることで、コミュニケーションやキャリアにおいて無理なくスムーズに成果を上げることができます。
人間には「利き手」と同じく「効き脳」が存在する
あなたの「利き手」はどちらですか?
人間には「利き手」や「利き眼」があるように、脳にも「効き脳」と呼ばれる、思考特性による違いがあります。これを簡単に言えば、脳が無意識に反応する「思考のクセ」です。
この思考特性(効き脳)は大きく4つのタイプに分類されます。自分の思考特性にあった活動であれば、人は苦痛を感じることなく、高いモチベーションで、長時間集中できます。つまり、仕事や勉強に身が入り、成果を上げやすくなります。反対に、自分の思考特性に合っていない行動は、苦手意識が生じるため、やる気も起きにくくなかなか成果は上がりません。
学習スタイルを例にあげれば、通信教育を最後まできちんとやり遂げられる人と、必ず途中で投げ出してしまう人がいます。最後まで続けられるかどうかの分かれ目は、決められた計画に沿ってきちんと物事を進めていくという、通信教育の学習スタイルと自分の思考特性が合っているかどうかなのです。
通信教育という学習スタイルが自分の思考特性と合っていない人が、いくら「根性でやり遂げよう!」と気合いを入れても、やはり無理なものは無理なのです。通信教育が自分の学習スタイルと合わないのであれば、スクールや家庭教師、留学など、自分の思考特性に合った他の学習スタイルを探せばよいのです。
大切なことは、自分の思考特性(効き脳)に合った「無理のないスタイル」を見つけることです。
「効き脳」がコミュニケーションを左右する
そして、この「効き脳」(思考特性)の違いによって、人はそれぞれ理解・納得するポイントが異なります。したがって、私たちの日頃のコミュニケーションの難易度(=相性)は、コミュニケーションをとる相手との「効き脳の組み合わせ」に大きく左右されるのです。
お互いの考えていることが語らずとも分かる「ツーカーの仲」の一方で、時間をかけても理解・共感しづらい相手がいるのはこのためです。
逆に言えば、効き脳(思考特性)の特徴を理解できれば、なぜ相性が悪いのか、どうすればより効果的なコミュニケーションが図れるかが分かります。相手を“許せる”ようになりますし、余計なストレスを溜めずにすむのです。
効き脳を仕事やプライベートに上手く取り入れていきましょう。
「効き脳」は優劣ではなく特徴(特性)としてとらえる
「効き脳」のベースとなっているハーマンモデル理論は、50を超える博士論文でその有効性が確認されています。
欧米を中心にすでに200万人以上の利用実績がありますが、 企業の現場を中心に、主に次のような領域で活用されています。
- コミュニケーションの促進・向上
- チームビルディング
- 採用や適材配置
- 個人のスキルアップやキャリア開発
- 顧客への提案力(営業力)強化
効き脳を活用していく上で重要な2つのポイント
- 優劣・正誤・良し悪しという評価ではない
効き脳は、あくまでも一人ひとりの思考特性(特徴)を示したものです。
「AタイプがBタイプより優れている」とか、「ABタイプ(二重優勢)の方がAタイプ(単独優勢)よりも能力的に優れている」ということはありません。
また、「効き脳診断」の結果に表示されている「指数の合計は全員同じ(200点)」ですから、レーダーチャート(四角形)の形や面積の大小で優劣が示されるということはありません。
やや乱暴な言い方をすれば、人間の血液型に優劣がないのと同じことだととらえてください。
2. 思考特性は、一生変わらないものではない
私たちの脳はトレーニングによって、年齢に関わらずその能力は向上できることが分かっています。
ハーマンモデル理論では「先天3割 、後天7割」と言われており、環境やトレーニングによって効き脳も変化します。だからこそ、なりたい自分や相手との関係に近づくことができるのです。
効き脳診断の結果を深刻に受け止める必要はありません。気軽に、前向きにとらえてください。
脳科学の進歩と発展 ~ 代表的な二つの脳研究 ~
近年、めざましい進歩を遂げた脳科学は、医学や科学の領域を越え、社会や生活と結びつけて語られるようになりました。
ここでは20世紀半ば以降の代表的な研究の中から、ハーマンモデル理論に関連する2つのモデルを紹介します。
右脳・左脳モデル
1960年代、ロジャー・スペリー(Roger Wolcott Sperry、米国の神経心理学者)らによって大脳の2つの機能を明らかにする研究が始められました。そして、次のような研究成果により、1981年、スペリーらはノーベル生理学・医学賞(大脳半球の機能分化に関する研究)を受賞しています。
- 右手を動かしている左脳は論理的、分析的で、順序立ち、理性的な思考の機能があるのに対し、左手を動かしている右脳は広い視野で全体を認識する傾向が強く、瞬間的、直感的、視覚的、合成的、感情的で、表現力が豊かである。
- 左脳は論理的、分析的、数学的な方法によって検証するのに対し、右脳は直感によって解決策を見出す。
- 左脳は物事を異なる要素に分類するのに対し、右脳は物事を全体的に考え、関係や類推、類似するものを探す。
三位一体型脳モデル
1970年代、米国では脳の研究が盛んになり、米国国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)の主任研究員であるポール・マクリーン(Paul MacLean)が学説「三位一体型脳モデル」を提唱しました。
これは、人間の脳は「脳幹」「辺縁系」「大脳新皮質」の3層が順番に発達し、それら3つの機能を持つ脳が一体となって働くという理論です。
その中で、思考に関する重要な部分は「大脳新皮質」(脳の上層部)と「辺縁系」(大脳新皮質の内側)であるとされています。
出典:『ハーマンモデル解説書-ABCD’s of Whole – Brain Technology』(ハーマン・インターナショナル・ジャパン発行)
「右脳・左脳モデル」+ 「三位一体型脳モデル 」=「ハーマンモデル」
米国のGE社(General Electric)の社員教育責任者であったネッド・ハーマン(Ned Herrmann)は、前ページで紹介したロジャー・スペリーの「右脳・左脳モデル」と、ポール・マクリーンの 「三位一体型脳モデル」の2つの理論を統合し、「ハーマンモデル(ホールブレインモデル)」を構築しました。
つまり、人間の脳は、大脳新皮質の左右と辺縁系の左右の計4つの部位から構成され、それぞれ異なる機能を担っているという理論を打ち立てたのです。
そして、大脳新皮質の左側を「A」、辺縁系の左側を「B」、辺縁系の右側を「C」、大脳新皮質の右側を「D」と名づけ、それぞれに青(A)、緑(B)、赤(C)、黄色(D)の色を割り当て、脳の4象限モデル、すなわち 「ハーマンモデル」を構築したのです。
もともとネッド・ハーマンが脳の機能に興味を持ったのは、 思考の優先度についての好奇心からでした。
コーネル大学在籍中、彼は医学と音楽のまったく異なった両分野において優秀な成績を修め 、GE社に勤務中も絵画と彫刻で才能を発揮しました。こうした背景のもと、ハーマンの脳への興味は、GE社の社員教育責任者としての職業上の興味によってさらに高まりました。
「研修会に参加しているマネージャーたちが共通の教育プログラムを受けたにも関わらず正反対の研修効果がでるのはなぜだろうか」
「彼ら一人ひとりのキャリアと仕事に即した研修プログラムを開発するにはどうしたら良いだろうか」
このように考え続け、1977年から10年の歳月をかけて、独自の「ハーマンモデル(ホールブレインモデル)」を作り上げていったのです。
出典:『ハーマンモデル解説書-ABCD’s of Whole – Brain Technology』(ハーマン・インターナショナル・ジャパン発行)
診断結果
サンプルをもとに、効き脳診断結果の見方について説明します。
上段(1~4)には、効き脳の診断結果に基づいた思考特性が表示されています。
下段(5~8)では、4つの視点から診断を分析しています。
- コミュニケーション難易度、または職種イメージ
- ワークスタイル
- 得意タスク
- ラーニングスタイル
1. あなたの効き脳
脳の思考特性とその特徴を「可視化・数値化」し、受検者の効き脳をレーダーチャートで表しています。
2. 診断結果の総評
ここでは、「1」のレーダーチャートを解説し、この結果に基づいた効き脳についての思考特性を説明しています。
3. 象限の傾向
脳が反応しやすい象限の順番が表されます。
4. 思考傾向
効き脳を表したレーダーチャートを「上下」で見比べ、大脳新皮質モード(認知的)と辺縁系モード(情動的)の思考の割合が表されています。
5. コミュニケーション難易度、または、職種イメージ
この部分は、診断結果の利用目的に応じて表示を選択することが可能です。
社内研修、人材教育・開発、人材配置などにご利用の場合は「コミュニケーション難易度」、人材採用やキャリア開発などにご利用の場合は「職種イメージ」の表示を推奨しています。
6. 得意タスク
仕事を行う上で、得意に感じながら実施できることと、不得意意識やストレスを感じやすいタスクが表示されています。
7. ワークスタイル
仕事を行う際の、4つのスタイルの傾向や適性が表示されています。
スライドバーのマーク(▼)の位置が、それぞれのワークスタイルのバランスを表します。
8. ラーニングスタイル
上段5点が効き脳を活かした学習スタイルです。モチベーションを保ちつつ、効率的に新しい知識やスキルを身につけやすくなります。
「効き脳診断」をマーケティングにも活用
ドルチェ・マーケティングでは、「効き脳診断」をマーケティングにも活用して、プロデュースしています。
株式会社コーセー様の高付加価値ブランド『コスメデコルテ』の、30代を中心とする女性へ向けたシリーズ「AQ MW(エーキュー・エムダブリュー)」向け「効き脳診断」を応用した診断ツールをプロデュース
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